調教師 橋口慎介先生インタビュー(前編)
教えて!橋口慎介先生!(前編)
競馬を支えるホースマンたち、このコーナーでは教えて〇〇先生!ということで調教師の皆さんに競馬にまつわる話を伺い、どんどん深堀りしていきます。
今回は厩舎開業7年目、栗東の橋口慎介先生に私、UMAUMA代表の澤がインタビューさせていただきました!
出身地:滋賀県
生年月日:1975年3月31日(47歳)
開業年度:2015年
主な活躍馬:ワンアンドオンリー、グレイスフルリープ、レーヌブランシュ
■前編インタビュー内容■
● 橋口慎介が調教師を目指したきっかけ
・ 無意識のうちに心に抱いていた憧れ
・ アイルランドへ4年間の武者修行
・ 池添兼雄厩舎での15年
・ 調教師としての喜びとは
● 競走馬づくりに対するこだわり
・ 競走馬は勝ちたいと思って走っていない
・ ワンアンドオンリーが教えてくれたこと
橋口慎介が調教師を目指したきっかけ
澤 まず早速なんですが、橋口先生が調教師を目指すきっかけというのは何だったのでしょうか?
橋口 僕自身、幼少期はトレセンにいる周りの同世代の子供たちと過ごしてきたので、競馬に興味を持つようになり、ホースマンとして何らかの形で携わっていきたいなと思っていました。最初は友人と一緒に中3の時に騎手試験を受験しましたが、視力が足らずに不合格となりました。その時に調教師になろうと決めたんです。
無意識のうちに心に抱いていた憧れ
澤 なぜその時に調教師になろうと思ったんですか?橋口 自分でも良く分からないんですよね、父親が調教師なのはもちろん分かってましたが、それを見て調教師になりたい!と思っていた自覚はなかったので。ただ小学校の時の文集には将来の夢は調教師になりたいと書いてあったんです(笑)無意識のうちに父親に対して何か憧れというか、尊敬の想いを抱いてたんですかね。
アイルランドへ4年間の武者修行
澤 そうだったんですね(笑)その後、先生はアイルランドの大学に競馬を学びに行ったと伺いましたが、どういったことを勉強されたんでしょうか?橋口 はい、高校では馬術部に入ってまして、高校卒業後、アイルランドのリムリック大学の馬科学科で4年間勉強しました。アイルランドでは馬上訓練、厩舎での研修、現地の調教師が来て、色々教えてくれる授業もありました。エイダン・オブライエンなどの有名調教師からも様々なことを吸収することが出来ましたね。他にも例えば主催者側としての競馬ビジネスについて、経営学的な視点の授業などもあって様々な視点で競馬について学ぶことが出来る環境でしたね。ただ4年制の大学なので通常の授業というか経済学、生物学といった授業もあるんですよ(笑)ただそのおかげ幅広い視点というか読書をするようになったり、物事を様々な角度から捉えることの重要性を感じるようになりましたね。
池添兼雄厩舎での15年
澤 それは素晴らしい経験をされたんですね!日本にもそういった競馬を学べる大学があればなと思います(笑)大学卒業後はどうされたんでしょうか?橋口 大学卒業後は山元トレセンで1年働き、その後は池添兼雄厩舎で調教師試験に合格するまでお世話になりました。
澤 そうだったんですね!池添兼雄厩舎ではどういった経験を積まれたんでしょうか?
橋口 はい、持ち乗り助手をやらせていただいたりしてたのですが、池添先生は基本的に何でも任せていただける人だったので、凄く仕事がやりやすい環境でした。自分の担当馬の餌の種類や配分、調教メニューなども含めて、全て自分で考えさせてもらいました。そこでトライアンドエラーを重ねながら、成功体験を積んでいったことは間違いなく、今に生きていますね。
澤 なかなかそういった職場の環境はないですよね!その後、調教師試験を受験されたんですね?
橋口 はい、30代後半で試験を受けて、2回目で受かって合格することが出来ました。
澤 2回目ですか!?それは凄いですね、、、
橋口 結構勉強しましたので(笑)
調教師としての喜びとは
澤 そして、現在は調教師として活躍されている先生ですが、調教師として働く毎日でやりがいというか仕事に対する思いなどをお聞かせいただけないでしょうか?橋口 そうですね、やっぱり勝った時のオーナー、スタッフが喜んでくれている顔を見るのが一番嬉しいですよね。それを見るために毎日、馬とスタッフと一緒に頑張っています! あとやっぱり新馬が入ってきて、凄い動きをするのを見ていると夢が膨らみますね(笑) そういった夢を毎年、違う馬で見れるのも本当に楽しいですね。
競走馬づくりに対するこだわり
澤 それでは、次に橋口先生が馬に対するこだわりというか、競走馬づくりをする中で意識されていること、厩舎全体で取り組まれているようなことについてお伺いさせていただきたいと思います。
橋口 はい。やはり前提として競走馬はアスリートであるということは理解しなければならないですね。
競走馬は勝ちたいと思って走っていない
澤 なるほど、それはどういうことなのでしょうか?橋口 人間もそうだと思うのですが、体を仕上げることも大事ですが、何よりも気持ちを仕上げることに尽きると思います。人間と違って競走馬は勝ちたいと思って走ってないですからね。ということはいかに馬が走りたいと思う状態に持っていけるかどうかが重要です。
澤 確かにそうですね、調教では強めに動かす、いわゆるスパルタ調教といわれるものもあると思うのですが、先生はどういったことを調教で意識されているのでしょうか?
橋口 もちろん、しっかり馬を動かす、タイムを出すことも大事です。ただ強い負荷をかけると確かに体は仕上がりますが、馬は走るのが嫌になったりすることもあります。 馬にとっての身体的、精神的なバランスを取る、そこの間を上手く掴めるよう意識していますね。
ワンアンドオンリーが教えてくれたこと
澤 なるほど、競走馬は生き物ですものね。心と体のバランスというものは本当に難しいです。先生が携わってきた馬の中で、この馬は本当に難しかったなという馬はいますか?橋口 そうですねえ、難しかったというか、本当に苦労したなという馬はやっぱりワンアンドオンリーですね。開業初年度から引き継いだ際は成績は下降気味でしたが、やはりダービー馬ですから、素晴らしい馬体で何としても結果を出さねばと思い、試行錯誤を重ねました。ですが、結果を出すことは出来ませんでした。年齢と共に体つきは間違いなくダービーを勝った時よりも凄かったですし、間違いなく能力を出し切れば結果を出せる馬でした。調教も凄く頑張る馬で、でもなぜかレースでは途中で自分から止めちゃうんです、、、今でもあの時のどうしようもないもどかしさ、レースを終えるごとに感じるしんどい気持ちは忘れられませんね。本当に後悔しています。ですが、そこからより馬の気持ちを優先しなければならないというか、馬づくりに対して心身のバランスの重要性を強く意識するようになりましたね。(中編へ続く)
ワンアンドオンリー(日本ダービー)
次回予告:橋口厩舎の戦略とは?競走馬のデビュー時期は一生を左右する!?
乞うご期待ください!
後編はこちら
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