高村牧場 高村祐太郎代表インタビュー(前編)
牧場インタビュー 高村牧場(前編)
競馬を支えるホースマンたち、このコーナーではサラブレッドの生産牧場に生産にまつわる話を深堀りしていきます。今回は第二弾ということで今年度のサンデーサラブレッドクラブ募集馬のビートフォーセール21で話題となりました高村牧場高村代表にUMAUMA代表の澤がインタビューさせていただきました!
高村祐太郎代表のプロフィール
出身地:北海道
主な生産馬:ショウリュウムーン、キクノストーム、アンジュミニョン
出身地:北海道
主な生産馬:ショウリュウムーン、キクノストーム、アンジュミニョン
■前編インタビュー内容■
● 伝統受け継がれし高村牧場
・ 小さい時から隣には馬がいた
・引退後も元気でいてほしい
・ 生産の厳しさ・救えない競走馬の命
● 競走馬づくりに対するこだわり
・ 「売る」ではなく「走る」馬づくりへ
・ 馬は四輪駆動とバランス
・ 馬と人との距離感
・ 高村牧場の配合理論
伝統受け継がれし高村牧場
澤 本日は高村代表に牧場、生産に関する話をお伺いさせていただきます。よろしくお願いします。
高村 はい、そんな大したことは言えませんがよろしくお願いします。(笑)
小さい時から隣には馬がいた
澤 まず早速なんですが、高村代表が牧場を始められたきっかけというのは何だったのでしょうか?高村 私はこの高村牧場としては3代目でして、父から引き継いだ形になります。なので幼少期から馬と一緒にいましたし、気がついたら動物と一緒にいたこともあって馬に対して特別な感情などはなく、普通に動物が、馬が好きでした。ただ親からは牧場を引き継がなくても良いよと言われていたこともあり、普通科の高校に入って、大学も経済学部に入学しました。大学も無事に卒業したのですが、得意なことややりたいこともなく、どうしようかと思った時にやはり自分は馬が好きだと思ったので牧場を引き継ぐことに決めました。
澤 そうだったんですね、引き継ぐと決めてからはすぐに牧場で働き始めたということですか?
高村 いえいえ、いくら牧場の息子とはいえ、素人同然だったこともありましたのでその後すぐにオーストラリアにワーキングホリデーで渡豪し、アローフィールドで研修を受けました。そこではセリ、生産に関する内容や野外放牧の方法についてなど具体的な内容の研修で、非常に学びになりましたね。
引退後も元気でいてほしい
澤 そうでしたか、実際今、生産牧場としてやっていく中で感じるものはありますでしょうか?高村 やっぱり生産馬が勝つと、馬主さん、調教師さん、そして隣近所の人もみんな喜んでくれるので本当に嬉しいですね。またセリで買ってくれた人が喜んでくれるのもやりがいを感じます。最近は生産馬が引退した後に大学の乗馬部に行くことが多く、Twitterなどで引退馬が元気にしている姿などを見たり、「元気ですよ!」と連絡を乗馬部の方からもらったりすると本当に嬉しいですね。競走馬は引退して終わりではなく、その後も幸せに暮らしてほしいです。
生産の厳しさ・救えない競走馬の命
澤 確かに、元気でいつまでもいることが僕たち競馬ファンも望んでいることですね。とはいえ、生産は本当に難しく、苦しいものだと思います。高村 そうですね、、、競走馬が生まれて、デビューするのが当たり前だと思うのですが、実際は生ませてから育成場まで送るのが本当に難しいという現状があります。今では放牧を行う際に、夜間放牧をすることが当たり前になってきていますが、やはり放牧中の事故というのは避けるのは難しいですし、実際群れとのじゃれあいで折れたりもあります。一番期待している馬がそういった事故で死んじゃうと本当に悲しいです、、、仔馬だと病気になることも多いです。免疫の暴走?解明できない、治療法がない病気にかかることもあります。そんな時はいかに症状をやわらげるか、色んな獣医さんに 聞きますが、命を落としてしまう結果になることがあります。毎日そういったことが起きないように勉強していますが、足りません。それが本当に悔しいですし、永遠の課題ですね。ただそこで学んだこと、得たことを次に生かすこともできます。そうやって馬たちと向き合う毎日ですね。
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競走馬づくりに対するこだわり
澤 生産の厳しさがあるからこそ競馬が成り立っていますよね。それでは次に高村牧場としての馬づくりに対する考え方をお聞かせください。
高村 はい、正直なことを言うと、元々はセリで売れる馬を作っていました。
「売る」ではなく「走る」馬づくりへ
澤 なんと、そうだったんですか、確かにセリに出てくる馬は恐ろしいくらいピカピカで凄いです(笑)高村 まさしくその通りですね。体を良く見せるためにエサを工夫したり、放牧を控えて体が減らないように したり、種つけも売れ筋の種牡馬をつけていました。これでは長期的な目線で見た時にダメだなと思い、今は完全に走る馬づくりにシフトしています。正直セリで高く売れなくても良いと思っています(笑)牧場で生まれた馬が結果を出す。買ってくれた馬主さんが喜んでくれる。それが積もり積もって信用につながると思って、今は動ける馬づくりをと思っています。
馬は四輪駆動とバランス
澤 いや、素晴らしいとしか言えませんね。動ける馬づくりとは具体的にどういうことなのでしょうか?高村 一言で言うと馬のバランスを大事にしたいと思っていまして、馬はそもそも四輪駆動で前だけ後ろだけというわけには行かず、凄く難しいです。なので獣医さんや大手の牧場さんの話を参考にしながら四つ足全てが連動して動くような馬になるように、日々、馬のバランスという のをチェックしながら気を付けていますね。前駆だけが発達しすぎてもダメですし、後躯だけでもダメ、大きくなっているからといって喜んではいけないと思います。
馬と人との距離感
澤 なるほど、四輪駆動という発想はありませんでした。どうりで高村さんの生産馬は見た目がきれいな馬が多いなと思います。馬に対して接する際に意識されていることはありますか?高村 そうですね、やっぱり馬が人を信頼することが一番大事だと思います。なので馬と人との距離感というのにこだわっていますね。当歳は当歳の距離感、1歳馬は具体的に言うと腕一つ分離れているくらいの距離感で。近すぎず、遠すぎず。人に対して意識を持たせる、そばにいても安全でケガをさせない、人の話を聞いてくるような馬にしていくことは常に意識しています。仮にほったらかしにして放牧だけしていると頭絡一つにしてもかけ方一つでケガをしてしまいすからね。あとはとにかく、馬に触れること、スキンシップを人から積極的にとっていくことで馬が受け入れてくれるようになります。
高村牧場の配合理論
澤 なるほどですね、高村さんの生産馬は非常に聞き分けの良いというか落ち着いている馬が多いなと思ったのはそういうことだったんですね。先ほども少し触れましたが配合に関して何かこだわりなどありますでしょうか?高村 そうですね、昔は本当にトレンドの種牡馬をつけていたのですが、 今は自分が好きな馬をつけるようにしています。最近は日高地方の牧場の多くはダート馬が多いですが、自分は芝馬が好きなので今年も芝馬をつけました(笑)去年のセレクションセールにおいてナパの20(エイシンフラッシュ産駒)が売れた時に見てくれている人は見てくれるんだと凄く自身になったのもきっかけですね。※ナパの20(タイセイサンダー)は先日の東京新馬戦で2着。配合的なところで言うと、うちの生産馬で最も活躍したショウリュウムーンの母であるムーンザドリームですが、、、(後編に続く)
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